怪事廻話
第六環・愚か者だと笑えばいいさ①

 逆転の希望が見えた。召集した美術部に対し自信たっぷりにそう言い切った薄雪は、仕切り直すように一つ咳をすると、至極真面目な調子でこう続けた。
「先日京都にて【灯火】の猿神ひのえらが方々の妖怪・幽霊たちを集め、此度の事変・・に対する助勢懇願こんがんをしたことについては知っているか?」
「えっ……いや、あっちも京都に行くってのは聞いてたけどそこまでは」
 真っ先に応え深世は首を横に振る。彼女が知るのは先週の放課後、嶽木が後輩部員に対して御守りを配る姿と、その時に教えられた「修学旅行にタイミングを合わせて京都に行く」という情報だけだ。
 その傍らで、こういう時に真っ先に情報を掴んでいたりする遊嬉もまた「知らなかった」と漏らす。
 彼女は彼女で、京都に住むという妖怪職人に対して修学旅行のタイミングで接触できればと考えていたが、思いついたときには嶽木らにまで京都に行く考えがあるとは知らなかった。知ったのはその"考え"を嶽木に話したあとであり、そのときはそのときで「嶽木も京都行くのか」くらいに捉えていたため、珍しくその目的までは気に留めていなかったのだ。
 身も蓋もない言い方をすれば、「言われなかったので気にしなかった」のである。
「本当に知らなかったのか?」
「今回ばかりは本当」
 今までの積み重ねから深世が向ける疑惑をきっぱりと否定し、けれども遊嬉は、直後何かを思い出したように「あ」と漏らした。
「京都で刀受け取って北中が襲われたって報告受けた後【月】の連中が襲ってきたんだけど、それも嶽木たちがしてたことに関係が……?」
 遊嬉はやや確信なく語尾を弱めた。一方でそんな彼女に五つの視線がぐるりと向かい、
「いや、あんたらが襲われたって話は初耳なんだけど」
 代表するように杏虎が言った。他四人もこくこくと頷いている。
「あれ言わなかったっけ。京都でこっそり守られてたって話」
 遊嬉は皆の様子を見て心底不思議そうに言うが、しかしそれも仕方ないこと。あの日――修学旅行二日目の夜。ホテルの廊下で遊嬉が彼女らに伝えたのは、異怨が攫われたという確かな情報・・・・・と、どうやら自由行動の間【灯火】に守られていたようだという推定事実・・・・のみ。……後者の発言に至るまでの過程は皆が前者の問題に注目した為大幅カットされたのである。
 当然のように噴き上がる「聞いたけど聞いてない!」という不満を浴びて、遊嬉は渋々班行動中離脱中に起ったことを簡潔に語った。

 路地裏で襲われたこと。襲ってきたのは二軍かそれ以下の寄せ集めだろうということ。
 そして後から考えれば、あれは嶽木ら【灯火】サイドを古霊町へ戻らせない、そして異怨が攫われた事を受けて再び【月喰の影】の本拠地を探らせない為の足止めだったのだろう、ということ。

「――そういやその時不思議な子に会ったなあ。原チャの後ろに天華ちゃん乗っけてたから、多分味方だと思うんだけど、そういえば乙瓜によろしくとか言ってたっけ」
「……はあ? 俺に? なんで」
「知らないけど、……つか改めて思い返すと顔立ちもちょっと似てたなあ。胸に赤リボンつけてる以外はラインもワンポイントも特にない真っ黒いセーラー着てたけど、知らない? 親戚とかとは違う?」
 親戚――と聞かれると、乙瓜にはたった一人だけ思い当たる人間が居た。多分、彼女を連れてきて以来、美術部の輪からは一歩離れて話を聞いている七瓜にも。
「っ、その人見た目俺らと同い年くらいだった? 髪の毛うねってなかった!?」
 ハッとして食いついてきた乙瓜に、遊嬉はやや引き気味に「うん」と返す。そして、
「てか今また思ったんだけど、京都とか関西のほうの訛りじゃなかったなあ。イントネーションもうちらとそんな変わらなかった気がする」
 遊嬉がそう漏らしたことが決定打となって、乙瓜は「うわあああ」と頭を抱えた。
「えっ何、どうしたん」
 怪訝そうな魔鬼を他所に乙瓜は呟いた。「蜜姉みつねえじゃん……!」と。
(いつから? なんで? そういう!? ていうか蜜姉はこっちのこといつから知って……!?)
 何の前触れもなくはとこの秘密(?)を知ってしまい、乙瓜はそれなりに混乱していた。……否、自分も怪事やその中で知り得た自分自身のことを蜜香に話したわけではないのだから、彼女の側にも乙瓜に明かしていない秘密の一つ二つあっても何ら不思議ではないのだが。それがまさかの『自分たちが今まさに関わっていることに関連したこと』だと知って、乙瓜としてはとんだ不意打ちを喰らった気分になった。
 蜜香がいつからそう・・で、どこまで・・・・知っているのか。そのことを考えると恥ずかしいような恐ろしいような何とも言えない気持ちが胸乙瓜の中で渦を巻くが……一方で、それならば、修学旅行出発前の通話であった不可解な問いにも納得が行くのだった。
「知り合い?」
「…………うん知り合い。てかはとこ」
 乙瓜がやっと魔鬼の質問に答えられるようになった中、七瓜がぽつりと言う。
「そういえば蜜姉も他の人には見えないものを視る・・・・・・・・・のが得意だったわね」と。懐かしそうに。
「それでかしら? もう随分会ってないけれど、元気そうで何よりだわ」
「元気そうすぎるわ。……後で絶対問い詰めてやる」
 乙瓜がぶつくさと言う中、かぽんと乾いた音が響き、皆の意識を「遊嬉の話」ひいては「遊嬉が出会った蜜香の話」から一旦引き離す。

「いい加減話が脱線してきたからの、こちらの話題に戻させてもらうぞ」

 皆の注目が向かう音源・・で、薄雪は叩き合わせた両手のひづめを離し、その為に置たのであろう葛篭を地面から再び拾い上げ、中断されていた己の話を再開した。
「がっつり脱線していたが……まあ【灯火】はどちら付かずでいる妖怪や幽霊たちに助勢懇願をしたんだが、それは思ったよりは上手く行かなかった。けれども【灯火】の膝元である北関東から東北にかけての妖怪が正式に【灯火】側につくことを表明したのじゃ。……奴らにもそれぞれ思惑はあるじゃろうが、まあ、それは一旦おいておいて。とにかくお主たちに味方が増えたわけじゃ。その結果を受けて、わしをはじめ大霊道の封じ手である古霊三大神社は一つのことを試そうと決めた。おぬしらの力を借りて」
「私らの?」
「そうじゃ」
 己を指さす深世にコクリと頷いて、薄雪は再び葛篭の中の勾玉を示した。
「既に見聞きして存じているかと思うが、これは禍津破まがつやぶりむつ勾玉と呼ばれる退魔宝具じゃ。これら一つ一つをかなめとし、その六点で形成される陣の内にある魔に類する力を封じることが出来るのじゃ」
 言って、薄雪は闇色の勾玉の中から唯一鮮やかな橙に染まる勾玉を取り出した。
「あの……神様? 杏虎ちゃんも言ったけど、どうしてこれだけ色が違うんですか? 前は全部黒かったと思うんだけど……」
 眞虚がおずおずと問うと、薄雪はいい質問をされたとばかりにニッと頬を上げた。
「それじゃよ。今日お主らを呼び立てた理由は」
 嬉しそうに言って、神は何やら語り始めた。
眞虚お主には以前それとなく言ったが、六勾玉で何をどれだけ封じていられるかは陣を形成する間勾玉の支柱となる使い手の力に依存し、封じたいものが強大であるほど要求される支柱の数と力も大きくなる。シンプルな話じゃ。神気に満ちた神代の昔は儂とその子供たちで支えとなり、この地を支配していた邪神諸共大霊道を封じ込めた。その時の封印は二千年は持ったかの。……だが神気が薄くなり信仰も薄くなった現代に於いて、儂も他の神々も昔ほど大暴れ・・・は出来ぬし、使える力も随分目減りした。体も大分小さくなったしな。……だが力が必要とはいえど、未だ目覚めぬ火遠彼奴が手にした力は強大すぎる」
「強ければ強いほどいいんじゃないんですか?」
「無論のことじゃが、六勾玉はそれぞれの要から吸い上げた力を集約して再配分し、それぞれの要を強力に結ぶ性質がある。一人だけ強大な力を持つ者を投じたりなどすれば、他の五人が支え切れずに潰れよる。たった一人だけが弱くてもまた然りじゃ。従って、六つの力は極力均一であることが望ましい」
 遊嬉の疑問にそう答え、薄雪は言った。

「とまあそんなわけで、お主ら美術部に今日から六勾玉を一つずつ所持して欲しい」

「はあ?」

 その瞬間、皆の息はぴったりだった。寸分の狂いもなく――少々のニュアンスの違いを含んではいたが――皆一斉に「はあ?」と言った。眞虚までもだ。
「いやちょっと待って。今の話の流れからどうしてそうなるのさ」
 先陣を切って深世が言う。当たり前だ。彼女は美術部三年の中では特にオカルト的特技とか特殊な出自とかそういったものを何も持たない一般人で、それは自他ともに認める事実だ。
「勾玉持ってる奴らの力は均一である程望ましいとか言ってたでしょ!? なのになんで私が頭数に入ってるのさ!?」
「ていうかていうか。あたしらの力も均一かどうかと言われたらよくわからない部分結構多いよ? その辺どうなんよ?」
「俺とか契約無くなった分弱い方になったのかの分強くなってるのかイマイチわかってないんだけどその辺どうなんだよ……」
 深世に続けとばかりに杏虎、乙瓜も口々に言う。薄雪はそれらの意見をしげしげと聞いた後、大きく一つ頷いた。
「ふむ。尤もな疑問じゃな。まあ焦るでない、その疑問にも答えようぞ。そもそも元よりそのつもりじゃ心配するな」

 そこから薄雪が語りだしたことこそが、古霊三神社の神とその眷属を代表しての計画であった。

 曰く。これから三神社の神々が六勾玉に持てる限りの力を注ぎ込むつもりなのだと言う。無論そんなことをすれば神社の力は弱まる。その隙を突かれて神々が倒されれば、二年前以来ギリギリのところで守られている『本来の大穴としての大霊道を封じ込める』封印も消え去ってしまう危険すらある。……そうなれば全ては終わりだ。北中の敷地を中心に古霊町は崩落し、今まで小出しになっていた瘴気も栓を失って爆発的に噴出する。そしてその力で【月喰の影】の最終計画が発動され、現行人類の歴史は終わりを迎える。最悪のシナリオだ。
 だがそんなリスクを背負ってまでする以上、勾玉に力を注ぐことには当然メリットがある。
 古霊三神社の力は、長きにわたって大霊道を封じていた力だ。たとえ今はなけなしでも、幾日にも渡って力を蓄えて行けば、全盛期に及ばずとも大霊道の底に眠る悪しき力に対抗できない道理はない。その希望があるからこそ、神々は「そうしよう」と決めたのだ。
 だが、その計画を成すためにはもうの大きな要素が必要となる。
 要素とはすなわち、神懸かりの力を持った人間の存在。封印と復活を繰り返してきた大霊道の歴史には、常に神々の依代よりしろとなり儀式を行う神官・巫女の活躍があったのだ。
 しかしそんな神懸かりの力を持った者は時代と共に数を減らし、半世紀近く前にミトウの森が切り開かれた時点ではすでに三人の老神官と一人の女に辛うじて素質が残るのみとなっていた。そして――自ずと自分たちが最後の世代になると悟った彼らが執り行った儀式と念入りに張り巡らせた封印も前世紀末に消滅した。その後草萼火遠によって施された封印も十年と持たずに崩壊し、古霊町に漏れだした瘴気が古霊町と近隣の怪異を活性化させた。
 けれどもそんな状況の中から怪異と渡りあえる人間が現れた。幽霊・妖怪を調伏する力を持ち、しかし時には分かり合おうとする心を持った者。嘗ての神官や巫女と同じ素質を持つ者。
「それがお主らで、儂らにはそうした者たちが必要じゃった」
 薄雪は言う。
 視えるだけの者、聴こえるだけの者なら現代にも大勢いる。だがその中には怖がるだけの者も沢山いる。拒絶するだけの者も沢山いる。視えないふりをする者も大勢いる。それは当然だ。誰だって異質なものは恐ろしい。
 だが視えて聴こえて渡り合えて、分かり合える。そんな者たちが居るならば、まさに神の力を授け託す巫女と呼べるのではないか。神の力を託し、大霊道を再び封印するのに足る存在ではないか。
 それが古霊三神社の神々の総意であり、更には後押しするように勾玉の一つが色付いた。
 そして京都へ赴いた【灯火】が、決して多くはないが、【月喰の影】の野望を打ち砕くという気概にあふれた味方を率いて来たのを見て、神社もまた決断したのだ。

 長らく三神社の領分であった大霊道の守りを、その拠点である神社の守りを。一時彼らに託すことを。


「というわけで儂らは今日からその六勾玉に力を注ぎ、【月】どもやつらとの決戦に備える。お主らへのおーだーは【月】が最後の戦いを仕掛けて来た際に勾玉に蓄えられた儂らの力を受容して解き放ち、大霊道諸共封印することじゃ。力の些細な高低は儂らの力で補完する。受けてくれるか?」
「はいはいなるほど、なるほどね。……って! だから! 私は! なんで!」
 長い長い話を聞き終えた後で、深世は再び爆発した。
「理由はわかったし理屈もわかった! でもだったらなんで猶更なおさら私が入ってるんだよぉ! こちとら確かに【月】の喧嘩買ったけど一般人なんだからね!? 私じゃなくてもそっちサイドに適役居るでしょ一人!」
 適役、とは言うまでもなく八尾異である。"二小のノストラダムス"と呼ばれた予知能力者にして読心術者、神社サイドが有するとっておきの切り札。すでに薄雪が視えるのみに留まっている薄雪の巫女斬子に比べれば、よっぽど巫女巫女している。
 だが薄雪はキョトンとした後難しい顔をして、「彼奴はな……」と意味ありげに言った。
「彼奴には無理だ。一口では説明しきれない事情があるが、簡潔に言うなら彼奴自身の力のが強すぎて儂らの力をその身に受容できぬ。外から守ってやることは出来るが……」
「?」
 どこか釈然としない説明に深世は首を傾げた。当然他の皆も誰一人として納得し切った様子はない。
「……あいつなにかあるのか?」
「色々じゃ。まあ全てに片が付いた後で覚えていたら教えようぞ」
 怪訝に問う乙瓜にざっくりとそう答え、薄雪は改めて深世を見上げた。
「――それでじゃ。八尾巫女でなくお主を選んだのは、お主ら美術部が丁度六人であるというのもまあ……あるが、それ以上にお主が丁丙の眼鏡に適ったというのが最大の理由じゃな」
 どんな形であれ、あの五人と最後まで一緒に戦ってくれるのじゃろ? 確かめるように問う神の瞳を見つめ返し、深世は確かに「うん」と答えた。
「ま、まあ? 確かに見捨てないって決めたし? 五人だけだとじゃーーーっかん頼りないし? いいけどね???」
「出たよツンデレだ。ひゅーひゅー! 頼りにしてるぜ部長さまー」
 茶化す遊嬉に「なにを!」と返し、美術部の中に笑みが零れる。
 薄雪はその様を見て「よし」と頷き、六勾玉の納められた葛篭を美術部に向けて掲げた。
「他に意見のある者がおらぬなら合意と見做そう。反論なき者は勾玉を手に取るが良い」
 その言葉に、部員たちはそれぞれ顔を見合わせた。そこに言葉はなかったが誰もが反対するような調子はなく、同調圧力で言えないでいるといった風でもなかった。けれどもそんな中で乙瓜がふと、ある疑問を呟いた。
「あれ、力注ぎ込むんじゃなかったのか?」
 それは「確かに」といった疑問ではあるが、神からすると愚問だった。薄雪は即座に「神の力を与えるのに距離は関係ない」と断言し、その上でこう続けた。
「六勾玉も意思を持った退魔宝具、所有者と認められんことにはその真の力は引き出せぬ。よって、お主らはいつ始まるとも知れない決戦までにその一つ一つに所有者と認められて欲しい。敵方の予定がはっきりとは分からない以上逼迫ひっぱくしていてすまぬが、頼まれてくれるか?」
 ここに来て少しすまなそうに薄雪は言った。けれども美術部の意思は先の時点で既に決まっている。

「やだなあ。引き受けるかどうかなんてもう答え決まってるんだよ」
 一つの勾玉を手に取りながら、遊嬉は言った。
「目的ははっきりしていて、それを叶える手段がある。なら断る理由はないよね」
 更にもう一つを手に、眞虚が笑う。
「やられなきゃいいんだよ。要はね」
「ま、まあ私たち負けないし! たぶん」
 ふふんと笑って手に取る杏虎に続き、深世もまた勾玉を手にした。
 残る勾玉は二つ。黒い勾玉と、皆が何となく避けて来た橙の勾玉のみが葛篭の中にある。
 それを左右から覗き込む乙瓜と魔鬼はどちらがどちらを手にするか迷い、薄雪に問う。

「そう言えば結局一つだけ色付いた理由って? なんだかさっきの話だとそれが後押しになったみたいに言ってたけど」
「それな。俺もそれが言いたかった。オレンジの方はどっちが持てばいいんだ?」

 と、二人が疑問と共に見つめた先で、薄雪は「ああそれはな」と、やっと理由を口にした。
「橙の勾玉は先達せんだってお主らがこの神域内で『修行』に励んでいた時、この白い空に弾けた橙色の"気"に宛てられたのが切っ掛けで急速に覚醒したのじゃ。烏貝乙瓜、お主の"気"でな」
「俺の?」
「そうじゃ。故にこの一つだけは誰が持つべきかはっきり決まっておる」
 薄雪は橙の勾玉を蹄の手に取り、乙瓜へと差し出した。
「陰陽五行で言うところの木行の気と秋の橙色を纏ったこいつに、儂は花橘はなたちばなの名を付けた。七瓜の偽物として生まれたお主が烏貝乙瓜という本物として実を結んだ証じゃ、大事にしよれ」
「…………ああ」
 橙の勾玉を受け取り、握りしめ、その手を感慨深そうに胸の前に掲げる。そんな乙瓜を、七瓜が安堵の表情で見守っていた。
 一方で魔鬼もまた勾玉を受け取り、それから再び問う。「認められるには具体的にどうすれば?」と。
「なに、特別なことは何も要らぬ。持ち歩き、お主らのあるがままの心根に触れさせておけば、勾玉の方が自ずと理解するじゃろう。特に今のお主らほど目的に対する意思がはっきりしているなら、そう時間は掛からないはずじゃよ」
 薄雪は答え、それから改めて一人一人の顔を確かめ、それから言った。

「大役を引き受けてくれたこと感謝する。頼りないかもしれないが、儂らはいつでも見守っておるぞ。じゃから――」

 もう少しだけ付き合ってくれ。小さな神は、本来自分たちを畏れ敬うべき人間に対し、深々と頭を下げるのだった。。

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