遥か昔、とある島国の北方に存在した小さな王国での物語。
生まれてすぐ捨て子となった少女・山桜花は、しかし心優しき猟師の男に拾われ、辺境の村で幸福な日々を送っていた。
けれども彼女が六歳になったばかりの春、過去幾度となく繰り返されてきた南方の国との戦争が再開し、幸福な生活に陰りが差す。
兵を集めるために村へやってきた役人は、養父のみならず山桜花までもを連れていくと告げ――
ここから綴られるのは、遠き日の《彼女》の記憶。
そして《彼女》の犯した罪に対する告白と、一つの懺悔。
……ああそうだ。愛されていたのだ。だから人の温かさを知っている。
そしてその温もりを守るためならば、人はどこまでも冷酷になれるのだということも。
だから、そう。……私も奪った。