怪事捜話
第一談・非常日常トロイメライ②

「はいはい良い子の一年生のみんなー。寄ってらっしゃい見てらっしゃい、これから先輩がエアブラシの使い方を教えちゃうぞー」
「あんたは露天商のおじさんかッ!」

 放課後。学年は変われど相変らず部活はあるわけで、学年の教室よりも広い美術室の中には、正規部員である二年・三年の他に数名の新一年生の姿があった。
 ここ古霊北中学校では、原則として生徒全員何かしらの部活動に所属しなくてはならない事になっているが、新入生がそれを決めるにあたって一ヶ月の猶予が与えられる。その間に全校集会での部活プロモーションや三日ほどの部活見学・体験期間が設置され、新入生は各部の実際の活動や人間関係等を自由に見て回ることが出来る。その後四月の最終週からの仮入部(必須ではない)を経て、五月の連休明けに正式入部の運びとなる。
 というわけで、現在美術室に居る一年生もその見学の為に集まった生徒であり、まだまだ仮入部未満の段階だ。
 現在の美術部が女所帯である為か見事に女の子だらけだが、中には明らかに様子見しに来ましたという顔の生徒もちらほら。勿論元々美術に興味ありそうな雰囲気の生徒も居るのだが、この中からどれだけの人数を正式な部員に引き込めるかどうかは、これから遊嬉たちが行う実演にかかっている。
 実演。現在戮飢遊嬉の手の中には、普段そんなもの持ったことも使ったことも無いだろう、ペン状の物体が握られている。単なるペンと違って持ち手の中ほどからホースが伸び、何やら仰々しい機器と接続されているそれを、遊嬉はこれまた普段引っ張り出そうともしないキャンバス板に向けた。そして"ペン"に付いているツマミ状のレバーを押す。
 すると忽ちシューッとスプレーのような音が立ち、板の上に赤い塗料が吹きつけられる。興味深げに見守っていた一年生から小さく歓声が上がる。その反応を見て、遊嬉は得意気に胸を張った。
 そんな遊嬉の反応に、傍らの深世はやれやれと肩を竦めた。
「いや、シュッとしただけで偉そうにするなし……」
 エアブラシ。この見学期間中、運動部が過剰にカッコよさを前面に出してアピールする中で、美術部が出し得る唯一の兵器おもちゃ
 去年顧問の美術教師がふらっと購入して配備されたそれだが、普段は箱に入って奥の棚に封印されており、まともに使用されている所なんて、深世ですら殆ど見ていない。確かに導入された直後は少しだけ盛り上がりはしたが、それも数日の間だけ。そもそも、今みたいに対外アピールしている時以外はほとんどオカルト部と化しているこの部活に於いて、エアブラシの役立つ場面なんてある筈もなかった。
 だがしかし、そんな実情を知らない一年生たちにとっては、他の部活にはないアピールポイントの一つとして大きく役立っただろう。板の上に意味のない模様を描かせられながらもキラキラとした眼差しを向けられるエアブラシを見て、深世は思った。エアブラシ……あんた今一番輝いてるぜ、と。

 そんな薄ら暗くも精一杯なアピール活動を後目に、美術部二年の残り四人はいつも通りぼんやりと雑談をしていた。遊嬉たちが実演する美術部の入り口側から一番遠い窓側で、これまた普段は棚の上が定位置の胸像を囲み、いかにもデッサンしてますよという体を装っているが、広げたままのスケッチブックからは真っさらな白紙が覗いている。
「遊嬉の奴張り切ってるねぇ」
 入り口二人の様子を振り返りながら杏虎が呟く。実演用に皆で白く塗りつぶした板は、既に半分以上が塗料の赤に侵食されていた。その不規則な軌跡はなんだか血糊のようになってきており、既におどろおどろしい雰囲気が漂い始めている。
 杏虎はそれを見て、真面目を装っていても本性って隠せないんだなぁ、と思った。
「今日で最終日だからね、仕方ない」
 シャーペンを回しながら魔鬼が言う。
「去年は見学期間妙に短いと思ってたけど、今ならわかる。……一ヶ月も余所行きみたいな活動してたら余計に部員入って来なくなるわ」
 魔鬼もまた血染めの掛け軸みたいになった板を見て溜息を吐いた。清々しい笑顔を向ける遊嬉と対照的に、一年生はドン引きしているようだった。
「あーあ。やっちまったな」
 乙瓜はカッターで色鉛筆を削りながら、振り向きもせずに言った。眞虚はやれやれと頭を抑えた。

 近頃の怪談自爆テロのあおりを受けて、美術部では「少なくとも見学期間中はおかしなことをしない」という限定ルールが発令されていた。
 "おかしなこと"とは乃ち、怪談話のこと。怪談好きでありながら怪事を調伏する立場の二人を擁する美術部としては、只でさえ怪談に突撃してえらい目に逢う新入生が絶えない中で更なるネタを与える事は危険と判断し、趣味の怪談話を自粛していた。
 当然、口を開けば学校の怪談から都市伝説、噂の廃墟や心霊スポットの情報まで何でも出てくる遊嬉には特に厳重に自粛を呼びかけているが、……声に出さずともあの調子ではいつ何をやらかすか分かったものではない。
 深世に何かしら注意されている遊嬉を恨めしそうに眺めつつ、魔鬼は言った。
「べっつに遊嬉には実害ないからなー。いいよなー」
 ぷぅと頬を膨らませながら、魔鬼は頬杖をついた。
 遊嬉は魔鬼や乙瓜と同じく怪異に対抗する力を持つ。退魔宝具と呼ばれる剣を振るい悪鬼悪霊を両断する退魔剣士が、遊嬉の持つもう一つの顔だ。しかし、それ故に基本的に目の前の異変をぶった斬る事しか出来ない遊嬉は、この度の怪談自爆テロについてはノータッチだ。「だって花子さんたち斬るわけにいかないでしょ」と言われた時に感じた黒い思いを、魔鬼は今でも鮮明に思い出せる。きっとあれが殺意って奴だ。
「顔なじみでも半ギレの学校妖怪相手にするのはそれなりに疲れるんだぞ……。やっつけるわけにはいかないし」
「本当それな。全く、どこからか迷い込んできた全く知らない相手の方がまだマシだっつーの」
 わざとらしく肩を揉んで見せる魔鬼に乙瓜も同意した。彼女が削っていた色鉛筆はひとつ残らず綺麗に尖っており、後はケースに収納するばかりとなっていた。
 そんな彼女らの様子を見ながら、眞虚は思い出したように言った。
「……そういえば、この頃妙に静かだよね。学校の中はすこし騒がしいけど、桜の件から余所からの妖怪が来たりしないし」
「ああ、確かにそういえば」
 杏虎は感心したような顔で深く頷いた。
 確かに、北中内では新入生による愚行が目立つものの、ここの所一月ばかり外部から何者かがやって来た様子はない。新しい噂もなければ、花子さんに特別呼び出されるようなこともなく。あの【三日月】だの【月喰】だのという連中も暫く鳴りを潜めたまま。
「何も来ないに越したことはないんだけどなー。仕事減るし」
「いや、でも何も無いと無いで大霊道塞がんないし、それはそれでなんていうか駄目じゃね?」
 ちみちみと色鉛筆を収納する乙瓜に杏虎は突っ込む。乙瓜は「そこなんだよなぁ」と溜息を吐いた。
「この頃火遠の奴もなーんも言ってこないし、学校に目新しい怪事もないし、どうしたもんかなぁ」
「そう言えば火遠くんたち見ないね?」
「……多分空気を読んだんじゃねーかな。こっちが怪談禁止令してるし、新入生いっぱいいるし」
「そっか、なるほどね」
 眞虚は納得したように頷いた。
「火遠くんたちなら姿も消せるだろうけど、そうしたらこっちが霊感少女みたいになっちゃうっていう」
「多分そういうこと」
 乙瓜はそう言うと見本通りに揃えた色鉛筆を見て満足そうに頷き、ケースの蓋を閉じた。
 スチール製のケースがパチンと小気味のいい音を立てながら閉まった、その瞬間。魔鬼は何かを思い出したようにシャーペンを回す手を止めた。
「あ。そう言えば今日は一つ良い事があった」
「良い事? なになに?」
 食いついた杏虎の方を見ながら、魔鬼は人差し指を立てた。
「今日の昼休み中はなーんもなかった。なー?」
「あー、うん」
 同意を促すように動いた視線に、乙瓜も頷く。二人が昼休みにやっている見回りの事を知っている杏虎と眞虚は、感心したように「へえ」と漏らした。
「この調子で盛り下がって行くといいんだけどねぇ、自爆テロ」
「ここから盛り下がるというか、金輪際愚かな犠牲者が出ない事を願うしかねぇな……」
 やれやれと肩を竦める魔鬼と乙瓜。自爆テロだとか、犠牲者だとか、大凡普通の女子中学生の会話の中で出てくるとは思えない物騒な単語は、遊嬉と深世の実演を見る新一年生にも実は少しだけ聞こえていた。そして、少なからず彼女達を震撼させたことは言うまでもない。

 ――この部活、本当は何をやってるところなんだろう……と。


 さて、見学期間には実は時間制限がある。春から初夏までは午後4時から6時までが部活の時間だが、見学・体験入部中の新入生は5時には退散しなくてはならない。一時間とは長いようで短いもので、美術室の時計の針もたった今5時を指した。それを見た部長の鳩貝秋刳が、実演二人に指示を出す。
「遊嬉ちゃん深世ちゃん、そろそろ――」
 そう言いながら、秋刳もまた立てかけたイーゼルを片づけ始める。部長も部長として遊んでいたわけではないのだ。エアブラシのような目立つ玩具に釣られず、普通に絵を描きたい有望株に静物スケッチのアドバイス等をしていたのだ。
 そんな秋刳の指示に応じ、遊嬉と深世は新入生に「今日はここまで」の号令を出す。一礼を済ませ荷物をまとめて撤退していく新入生に向かい、遊嬉は「是非美術部に来てねー」と手を振った。
「部員が増えれば……予算が増えて……美術館とかいっぱい行けるよ……ククク」
 廊下の向こうに姿が見えなくなったことを確認しながら、遊嬉は怪しく微笑んだ。
 こんな不真面目な美術部でも、時々作品を出した展覧会を見に行ったり県内外の美術館に行ったりするのだが、遊嬉の目的は勿論美術作品を大人しく観賞することではない。否、美術鑑賞は決して嫌いではないのだが、一日使う予定で行くと大抵時間が余るので、午後は美術館付近をぶらぶらすることになる。
 今更言うまでもないが、古霊町は田舎である。県庁所在地でも地方都市でもなく、その大半が旧来の農村の形を残しており、土地はやたらとあるのだが、所謂ショッピングモールだとかお洒落な飲食店とか、そういうものは殆ど無い。いや、殆どと言うか実質存在しない。
 その点、立派な美術館のあるような場所は大抵ちゃんとした市街地と呼べるものがあって、田舎に存在しない商業施設も沢山ある。よしんば街はずれの寂しい立地だったとしても、あまり馴染みのない場所というだけでちょっぴりテンションが上がる。遊嬉が望んでいるのは、つまるところこういう事だった。――バス旅行したい。
 そんな彼女の心中を察し、深世は頭を抱えた。
「不純だ……不純すぎる……」
「なーに、不純な動機が最終的に立派な成果として花開くこともあるさねー」
「ねぇよ!」
「あるんだなーこれがー」
 深世のツッコミの手をさらりと躱し、遊嬉は机の上に腰かけた。後輩の前で見せていた真面目な態度から一転、不真面目な本来の姿に戻った遊嬉は、眉を顰める深世を見てニヒヒと笑った。
「まだ窓から見えるぞ」
 深世は窓を指差す。一階の角にある美術室は外からも丸見えだ。且つ校門から昇降口の間で必ず通る道なので、先程見送った一年生にもはっきり姿が見えてしまう。
 それでいいのかと心配する深世をせせら笑うように、遊嬉は体をのけぞらせた。
「まあ、あたしが真面目やってても入ってくれない子は入ってくれないし、不真面目やってても入ってくれる子は入ってくれるって、ことでー」
「いやいや、いやいやいや……」
 否定の言葉を並べつつも、何といったらいいか分からない深世は途方に暮れつつ腰に手を当てた。
 深世は思う。新入部員が入らなければ、部としての存続が危うくなる。だが、こんないい加減な先輩とインチキオカルト塗れの沼に新入生を呼びこんでしまって、果たして大丈夫なのだろうかと。
(まあ、一年もすれば慣れてきちゃうんだけどさぁ……)
 その沼にどっぷり浸かってしまった自分に呆れながら、深世は何度目かわからない溜息を吐いた。
 そんな深世に、遊嬉以外の第三者から声がかかる。「深世さん」と、呼ばれて顔を上げた方向には、扉を開けて外に出て行かんとする乙瓜と魔鬼の姿があった。
「ちょっと外回ってくるー」
 そう言って上げられた魔鬼の片手には定規。購買でもコンビニでもどこでも売っている、何の変哲もないプラスチックの15cm定規が握られていた。
 深世はそれを見て全てを察し、気だるげに返事をして手を振った。
「ああはい、終わりまでには帰って来なよ」
「わかってるよー」
「じゃあなー」
 深世の言葉を了承と取ったのか、二人もまたヒラヒラと手を振りながら廊下の向こうへと消えて行った。
「見回りねぇ……」
 彼女らの背中を見送りながら、深世は誰に聞かせる訳でもなく呟いた。だんだん慣れてきた自分が怖いと、深世は再び俯いた。



 乙瓜と魔鬼の放課後の見回りは、同時に出て別々のルートを辿ることに決めてあった。今日までは5時まで新入生が部活を見学中なので、美術部の新人候補が撤退して5分もしてから行動を開始することにしていた。
 二人一緒に美術室を出てから、一番最初に当たる西階段で魔鬼が分かれ、乙瓜はそのまま廊下を直進、体育館へ向かう通路からプールを目指す。北中には水泳部なんて存在しないが、プールも一応怪談スポットなので念のため見回る。その間に魔鬼は各階の怪談スポットを見回り、最後にプールを見て美術室へ戻る。その途中で乙瓜が校舎内へ戻り、東階段から各階を見回る。大体こんな流れだ。
 その日も手筈通り西怪談で乙瓜と別れた魔鬼は、すっかり慣れた足取りでいつもの見回りコースを歩いていく。校舎内で活動している部活が少ない北中に於いて、放課後の校舎なんてほとんどもぬけの殻同然で。職員室やパソコン室、そして楽器の音が漏れ出る音楽室周辺を除けば、自分の足音がどこまでも響いていくような錯覚に陥る。その上窓から差し込む斜陽に照らされ緋色の光と黒い影がくっきりと分かれる校舎内は、元々持っていた古びた気配と混ざり合い、少しだけ不気味に見えた。
(いい雰囲気持ってるよなぁ、うちの学校)
 そんな校舎を一人歩きながら、魔鬼は思う。夕暮れの美しさと人気のない寂しさにひっそりと寄り添う静かな不気味さ。元々が怪談好きの身としては、新入生が噂に浮かされてついトイレの戸を三回叩いてしまうのもわかる気がする雰囲気だ。というか、大霊道絡みのあれやこれがなければ、魔鬼だって同じような行動をしたかもしれない。
 昼と夜の中間点。闇と光の境目。「花子さん遊びましょ」とか、「コックリさんおいでください」とか、つい言ってしまいそうな雰囲気。
(まあ、件の花子さんにはさっき会って来たところなんだけどさ)
 今日は何もなかったと機嫌よさそうに言う彼女の姿を思い出し、魔鬼は三階から階下へと降りていく。途中すれ違った乙瓜に軽く手を振ってから、プールを確認しに行った。
 風に揺られて静かに波打つプールは、オフシーズンにも関わらず綺麗な水を湛えていた。
 つい最近掃除したみたいに綺麗なプールの周辺には誰もいない。魔鬼はフェンス越しにそれを確認してホッと一息吐いた。このプールで北中七大不思議が絶賛発動中であるという事実は、どうやら誰にも気づかれていないらしい。
(だよなあ、だって地味だもん)
 プールに背を向けながら、魔鬼は思った。
 ――水がひとりでに綺麗になるプールなんて。確かに怪現象ではあるけれど、オカルトマニア的なニーズとはちょっと違うんだよなぁ、と。

「なんてこった、今日は本当に何もなかったぞ」
 独り言を呟きながら、魔鬼は美術室への廊下を行く。昼休みといい放課後いまといい、昨日までは砂糖に群がる蟻のように怪談実証をしていた一年生は一人も見つからず、魔鬼は内心拍子抜けした。
 確かに自体の鎮圧は望んではいたけれど、あまりにも突飛すぎて少し腑に落ちない。
(何か妙と言うか、変というか、不気味と言うか)
 形容しがたい違和感を感じ、魔鬼は何度も首をひねった。

 そんな風に、考え事をしていたからだろうか。
 魔鬼がそれに気づいたのは、もう美術室を目と鼻の先に迎える廊下の角を曲がった時だった。

 一瞬。空気が変わった。
 凍てつくような、あるいはけるような。不可解で不快な感覚が全身を通り抜ける。やや遅れ、視界の角度が数度変わったような違和感と共に、魔鬼を包む世界の色がじわじわと変色しはじめる。
「――変わった」
 ぴたりと立ち止まり、魔鬼は呟く。
 空気が変わった。僅かに座標がずれた。世界が変わった。その明確な異常事態に、魔鬼は心当たりがあった。
「どこかで怪談が発動した。どこかで妖怪が動き出した。どこかで妖界が展開した……!」
 妖界。現世ここだけど現世ここではない、ずれた場所。妖怪たちが展開させる異空間。それに巻き込まれているのだと、魔鬼は瞬時に察する。
 直後、悲鳴。耳をつんざくような大音声の悲鳴が、たった今曲がった角の向こうから響き渡る。少なくともそれは、少女の声であり。少なくともそれは、乙瓜の声ではなかった。
 叫び。必死の叫びと短いスパンで響く足音。走っている。誰かが何かから逃げている音。気配。それは次第に魔鬼の方へ近づいているようであった。
「全く、油断した先からこれだ……」
 魔鬼が半ば呆れつつも胸ポケットに手を伸ばし、差し込まれているいつもの定規を掴もうとした、その瞬間。

 角の向こうから現れた何かと、魔鬼の視線が交差する。

 弾丸のように飛び込んできたそれ・・は、角を曲がった先に居た予期せぬ人影に驚き目を見開く。
 魔鬼もまた、予想よりもはるかに早く到着したそれ・・を見て目を丸くする。

 それは、少女だった。魔鬼はほんのり気を張り詰めていたからか、その少女が突っ込んでくる様子がまるでスローモーションのように見えた。北中の制服を着ているのも把握できたし、上履きの学年カラーが一年生のものだという事も確認できた。
 ……ただ、見えただけで。衝突を回避することは出来なかったが。

「きゃわっ!?」
「あうっ!」
 次の瞬間魔鬼と少女は盛大に衝突し、互いにもつれ合いながら美術室の扉手前まで転がって行った。

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